ワンダーフリックはなぜ失敗したのか
そういえばそんなタイトルもあったな~、とか、今どうなっているんだろう?という感じで、検索してこの記事にたどり着いていただいた方が多いと思います。
結果から申しますと、2015年5月の段階で、同年9月のサービス終了が発表され、予定通り終了となりました。
当初はレベルファイブ肝いりの、大型メディアミックスが予定されていた「ワンダーフリック」構想。先行したアプリ版が出足から無残なことになり、当時のすべての家庭用ゲーム機(CS機)での展開は暗礁に乗り上げました。
でも、サービス終了のニュースは驚き……
出足から大コケ。なるべくしてなったサービス終了。いわゆる「知ってた速報」
まず大前提として、「フリック」というスマートフォン独特の操作を表す名称をタイトルにした時点で、家庭用ゲーム版との矛盾が生じます。あるいは実は、「ワンダー」シリーズということで、家庭用版は別の名称になった可能性もゼロではありませんし、付け加えだったり差別化を図るつもりはあったかもしれませんが、やっぱり「スマホ感」は拭えません。ただ、レベルファイブらしい良い意味での「子供っぽい語感」からは逸脱しておらず、“なんじゃそりゃ感”は無いタイトルでした。シンプルでいいですよね。
ですので、アプリ版が大流行すればCSでの展開も、「フリック」矛盾を無視して華々しく進んでいった可能性はもちろんあります。
ではその大流行があったかというと、まったくそんなことはなく、出足から大コケだったというのがシリーズを終了たらしめた最たる原因です。
期待は高かったのに…… 新規IPでは痛かった延期とログインオンライン
とにかく期待値は非常に高いアプリでした。
事前登録等も多く、レベルファイブの知名度だったり、宣伝だったりが功を奏し、開始日に相当数の人が遊ぼうと試みたと思われます。
しかしその前に、第一の痛手である「延期の延期」がありました。
これが例えば、「ドラゴンクエスト」シリーズだったり、「ファイナルファンタジー」シリーズでしたら、延期もファンは慣れていますので、全く問題はありません。というか、家庭用ゲームならば基本的に延期は痛くないのですが、スマホゲームのような、宣伝で盛り上がっているときにダウンロードしてもらわなければいけないタイトル(みんなの“やりたい熱”がMAXのときじゃないと損をする)は、延期というのは非常に痛手でした。
開始時に、もう一度思い出してもらわなければならない、あるいはまた宣伝をしなければならないからです。それを2回繰り返したのですから、多少のダメージはあったでしょう。
実際、サービス開始となってみれば、ある程度熱の保った状態ではありましたが、勿体無いことでしたね。
そしていざサービス開始。しかし、そこでもひどかった。
ダウンロードはできない(つながらない)わ、ゲームスタートでサーバーに弾かれるわ、マトモに遊べない状況でした。有名なオンラインゲームのナンバリングタイトルでしたら往々にしてある『ログインオンライン』現象ではありますが、新規のタイトルでは痛すぎますね。
覚えている人もいるかもしれませんが、「1000時間遊べる」という触れ込みのタイトルでしたが、実際は、1000時間待たされるゲームだと揶揄される始末でした。
いろいろなことを我慢したとしても、そもそも内容がつまらない
サービスから1~2日後くらいにある程度安定した記憶があります。そしていざ遊んで見ると……。
まあ、ゲームとしては新しい感じを受けつつも、面白さはなし。「こりゃつまらん」と一刀両断できました。そして、とにかく重かったですね。
今でこそフルHDにメモリ2~3GBが標準のような感じになってきましたが、当時はまだ古めの型を持っている人も混在していましたので、無駄な3Dグラフィックかつ、爆熱で、バッテリー高消費の石炭ゲームはその時点で受け入れ難し、でした。何かこう、レアリティ要素だったり、クラフティング要素だったり、ユーザーは減らしても一部の人がよっぽどヤバいハマり方ができそうな中毒タイトルの要素も感じられませんでしたので、改善に期待しながらがむしゃらに遊ぶ、ということもありませんでした。
この時点で、ワンダーフリックの生死は決まりましたね。
そもそも力を入れたゲームが必ず流行るとは限らない。絶対滑るとも限らないが……
力の入れ方というのは、過去のタイトルを見ると結構重要に思えます。(新規コンテンツに限る)
これはあくまで持論だったり主観だったりしますが、「マインクラフト」しかり、それこそ自社の「妖怪ウォッチ」しかり、「パズドラ・モンスト」しかり、「艦これ」しかり、大爆発したタイトルというのは、何か「スロースタート」というのが共通しているように思えます。
最初の注目度は正直微妙、しかし、さまざまなキッカケで火が付き、ドーンと大爆発。
蓋を開けてみれば、流行った要素なんていくらでも分析できるんですが、共通しているのは、最初から変に肩の力を入れて流行らせようとしていないということでしょうか。流行ればいいかな、という期待含みの状態。あるいは、本当にセンスの有る少人数が作り、ユーザーが流行らせたという状態。
逆に、肩の力を抜いたり少人数で適当にやれば当たるというわけでもありませんね。
明らかに力の入っている新規タイトル、メディア等から注目も集めていても、ちゃんと流行ったタイトルというのはいくつもありますね。それでもやっぱり、「力を入れたゲームが必ず流行るとは限らない」という法則が、本作ワンダーフリックには見事に当てはまります。そして当てはまった時のダメージもでかいですね。
注目を集めていたぶん、こんなに恥ずかしいことはありません。
例えるならば、大観衆の大声援のなか、颯爽と登場した選手がズボンを履き忘れていたような感じでしょうか。出だしからダメだったというところまで注目されているので、もう引き返せません。
流行った新規コンテンツには、最初ダメだったけど改善され、どこかのバージョンから大流行したというものもあります。それは最初注目されていなかったのが功を奏したのが、正直ありますね。
発表直後、あるいはコンセプトが明らかになったくらいの段階では、ワンダーフリックには“流行りそうなニオイ”を感じたこともありましたが、やはりサービス開始時のゴタゴタ含め、内容含め、完全に“ダメなニオイ”が支配してしまいました。
最初からでかいビジョンを描いたんですが、肝心のゲームがダメすぎて、ユーザーが付いてこなかった印象です。力を入れるべきは、まずちゃんとハマれる内容作りでしょう。
そもそもどうして流行ると思っていたのか?開発側のセンスを疑わざるを得ないが、カギは「レベルファイブ」
宣伝やビジョンによってユーザーが期待していたのは間違いありません。私も期待していました。CS機での展開を明示していたのが大きかったです。
しかし実際スマホ版を遊び、最大限良いように解釈したとしても、「なんでこんな内容が流行ると思っているんだろう」と、開発側のセンスを疑わざるを得ませんでした。救いようがない感じ。
未だに謎めいているものの、解決の鍵は「レベルファイブ」にあります。
結果的に間違った方向にドーンと突き進んでいても、すごく楽しそうに紹介したり展開しようとしたりしています。それは失敗を許す風土だったり、チャレンジ精神だったり、決して悪い保守的な思想は無いことの裏返しかもしれません。もちろん逆に、無難に大きくしようという悪い保守思想が働いてこんなダメIPが出来上がった可能性も否めません。
ただ、社長の日野晃博さんはセンスの持ち主ですが、こうして強弱を間違えることはありますね。ホームランを狙おうとしても力んでしまいます。ヒットのつもりがホームラン、という流行り方を狙い続けるべきかもしれませんね。
最近ちょっと打率が微妙な感じはしますが。
虫の息でリニューアル。今際(いまわ)で仰向けの昆虫を無理やり戻しても意味はない
ちなみにその後、ワンダーフリックはタイトルに「R」を付けてリニューアルしたのを覚えています。ですから、地味に遊んでいた人はいたのでしょうか。あるいはテコ入れか。
しかしこれは、例えるならば、死にかけの昆虫です。
昆虫、とくにクワガタムシというのは、平らなところでひっくり返ると自分では起き上がれません。やがてもがき苦しみ死にます。戻してやればまた元気になります。
しかし、死にかけの状態だと高確率で勝手にひっくり返り、元気な時のひっくり返りとは違い、ゆっくりした動作でもがきながら死にます。地味にしばらく動いていますが、それでも、死にかけの状態になった個体は、また戻してやってももとの元気は取り戻せません。そうなった時点で死亡確定という感じでしょうか。まさに虫の息です。
このタイトルがまさにそれで、おそらく最初から虫の息だったんだと思います。
いくら戻してやっても、もう死ぬことは確定していたのでしょうね。ある意味で非常に可哀想な、そして今でも印象的なタイトルだったように思えます。「ワンダーフリック」と聞くと、なにかいろいろこみ上げるものがあります。
見限ったレベルファイブ、反省してブラッシュアップするも、また大鉈を振るう
「R」へのリニューアルの前後かは忘れましたが、2015年のレベルファイブ発表会で新たなタイトル構想が明かされました。
現在もゲームセンターのプライズで見かけることはありますね。「スナックワールド」。
追記■2021年現在、そのスナックワールドすらカケラもありません。というか、レベルファイブ・・・?という状態。
NFCを活用するなど、ちゃんとおもちゃと組み合わせるとか、ターゲットを割りと絞ってきて、失敗しないようにしつつチャレンジ精神も含む感じにしています。このジャラというおもちゃが流行れば、大爆発コンテンツになりえる要素はあったという感じです。
当時は当然、ワンダーフリックよりは期待していました。
で、思えば、これを発表会で明らかにした時点で、ワンダーフリック切りは明白でしたね、という。
でこの「スナックワールド」は今(2017年11月時点)流行っているの?という問題ですが、最近はゲーム業界の流れを追っていないので不明ですが、調べた感じでは、「妖怪ウォッチほどの爆発には当然なっていないものの、3DS版もスマホ版もシッカリ展開していて、サイトを見た感じでも割りと一定の支持はあるタイトル」という感じですね。
レビューの上ではやや残念な印象もありますが、子供にある程度フィットし、少なくともゲームセンターのプライズで見かけるくらいの、「ひっくり返ってはいない昆虫」という感じですね。
アプリ版がどうなるかで、また命運が変わってきそうな情勢です。
追記■2021年現在、妖怪ウォッチブームももはや歴史の藻屑。レベルファイブの存在は闇夜に溶け込んでいます。新しいタイトルは出るのでしょうか。妖怪ウォッチのような社会現象は起こせるのでしょうか。mixiがモンストで息を吹き返したように、ダスキンのように、全く別の業種で名前を聞くことになるかもしれませんね。
追記■2024年11月現在、レベルファイブの状況を少し掘り下げてみます。
今年9月、レベルファイブは「LEVEL5 VISION 2024 TO THE WORLD’S CHILDREN」というオンラインイベントを開催し、新作をいくつも発表しました。「イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード」や「レイトン教授と蒸気の新世界」など、ファンの期待値が高そうなタイトルが並び、良い意味での盛り上がりを感じましたね。ただし、こうしたイベントでの「お祭り感」と実際の売上やゲームユーザーの熱量が一致するかは、正直なところ別問題です。
評判という点では、いくつか厳しい声も聞こえてきます。例えば、社員や元社員の口コミ(転職サイト)では「やりがいはあるが、待遇面では不満が残る」という評価がちらほら。ゲーム業界の厳しさもあるとはいえ、総合評価が3.2点というのは、まあ……少し気になる数字です。「子供たちに夢を届ける」という企業理念を掲げているだけに、内側からも外側からももっと支えがあるといいな、と思います。
あと、今年の東京ゲームショウ(TGS2024)では記念セールを開催し、妖怪ウォッチやレイトンシリーズが大幅値引きされていたようです。「あ、懐かしい!」と思う人が多いかもしれませんが、逆に言えばそれくらい時間が経ってしまったタイトルとも言えますね。新しいIPを作るのは大変なのか、過去のIPをどう活かすのか、そうした課題はどこでも難しいものです。
総じて言うならば、「過去の栄光を振り返りつつ、新たな挑戦を模索している段階」という印象です。妖怪ウォッチのような社会現象級の成功をもう一度成し遂げられるのか、それとも全く新しい方向性を見つけるのか……今後の動きに注目です。